セルロース分子の生合成において間違いを修復するステップは、合成開始、合成中、合成後の3段階あると考えられる。そこで本年度では、遺伝子からのアプローチを試みた。まず、セルロース合成菌(Acetobacter xylinum)のセルロース合成酵素オペロンの上流にあるセルラーゼ遺伝子をマーカーエクスチェンジ法によってノックアウトした。その結果、この微生物はセルロースの生産を停止した。次に、その変異株に、破壊したセルラーゼ遺伝子をpSA19に構築されたプラスミドとして変異株に形質転換させた。変異株は再びセルロースを合成した。セルラーゼ遺伝子は、Lacプロモーターによって高度に発現されたため、それに比例してセルロースの生産量も増加した。さらに、これにポプラのセルラーゼ遺伝子を導入してセルロースの生産を検討した。ポプラ以外にも、Tricodermaなどの強力なセルラーゼ、さらにはエンドタイプだけではなく、エキソタイプのセルラーゼをこの変異株に形質転換させて生成するセルロースを検討した。 現在までに得られた全てのデータは、セルラーゼはセルロースの合成とともに保存され、進化してきたことを示している。特に、植物、動物、微生物、カビ由来の系統樹解析を行ったところ、それぞれよく保存されていることが示された。
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