北部九州沿岸の岩礁で亜熱帯、熱帯性の磯魚稚魚の出現を潜水観察した。その結果平成13年度も多くの暖海性魚類の稚魚、幼魚が出現した。これらは毎年現れ冬季の低水温で死滅する種類と、同じく冬季の低水温で死滅するが、その出現が不定期で毎年現れることはない種類とに分けられた。前者には、カミナリベラ、ホウライヒメジ、ソラスズメダイなどが含まれ、後者にはホンソメワケベラ、ナガサキスズメダイ、オオスジイシモチ等が含まれる。平成12年度より後者に含まれる種類が急激に増加しており、その傾向は平成13年度も同じであった。平成13年度に初めて出現した種類としてはヨメヒメジが挙げられる。さらに、この両者に含まれる種類のあるものは越冬し生き残り翌年の夏には繁殖する種類も出現し始めている。過去数十年に亘って越冬が確認されていないのに、近年越冬、繁殖が確認された種類としては、コウライトラギス、ソラスズメダイ、ネンブツダイ、カミナリベラが挙げられる。このような現象は海水温の上昇と密接に関係していることは疑いがなく、これらの魚種の棲息上における海水温の季節的変動傾向を明らかにするため、現在自記式水温測定装置を設置し計測中である。
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