昨年に引き続き北部九州の岩磯で亜熱帯、熱帯性の稚魚の出現を潜水観察した。その結果、平成14年も多くの暖海性魚類の稚魚が出現した。13年に新たに出現した種類はヨメヒメジ、テンス属の1種、クマドリ、セダカスズメダイなどである。現在データーロガーで水温を記録中である。北部九州では14-15年の冬は13-14年に比して気温が低く、沿岸域では水温もそれなりに低下していると思われる。そこで、今年観察された暖海性の各種稚魚が冬に実際に死亡しているかどうか確認するために、北西の季節風により沿岸砂浜に打ち上げられる魚類の調査も開始した。今までのところ、これらの稚魚が打ち上げられる尾数は、夏から秋にかけての出現数に比して少ないことが判明している。このことは、単に水温の低下により死亡してしまうより前に、水温低下により弱ったところを他魚種に捕食されている可能性を示唆している。さらに、一部の魚種は沖合へと去り、生き延びている可能性も否定は出来ない。すなわち、従来死滅回遊、無効分散と呼ばれていた現象が、真に意味のない死滅のための回遊なのか検討の必要性も出てきた。 近年の暖海生稚魚の種類数の増加要因としては、(1)水温上昇に伴う産卵親魚の分布域の北進、(2)対馬暖流の琉況変化、(3)、水温上昇による浮遊期の延長などが考えられるが、どのような要因が最も大きく作用しているのか、現在検討中である。さらに、来年度は産卵親魚の分布が北進しているか否かについても検討する。
|