本年度は、昨年度循環区では最も飼育成績が優れた濾材(バチルス菌付きカキ殻濾材)を使用し、水槽への注水量を29〜112回転/日の試験区と20回転/日の試験区と流水区とで飼育試験を行い、生残率、成長、飼育水中の水質変化、飼育水中の細菌相変化等の比較を行った。しかし、西日本全域に流行したヒラメの表皮造生症(ウイルス病)が発生したため、飼育実験における生残率は6.0〜7.3%と極端に低く、ヒラメ仔稚魚の飼育ではみるべきものがなかった。しかし、循環区や流水区での水質の変化と出現した細菌種の変遷については解析のための基礎的な技術の確立ができた。また現在、検討を行っている。現在、容量10リッターの小型実験系を作り、濾過海水にアンモニア塩を添加して濾材の種類および枯草菌添加の有無、水温条件が、アンモニアの硝化に及ぼす影響についての比較試験を行っている。これらの結果をふまえて、最終年度の仔稚魚飼育システムの改良や飼育密度の設定を行う予定である。昨年度から新しく導入した枯草菌株は、既使用のものより有機物分解能力に優れており飼育水の透明性も高かった本年度後半に実施した比較試験でも、アンモニアの消化能力にも優れていることが判った。しかし、配合飼料を多用する飼育実験後半には溶存酸素の低下が著しく、稚魚の摂餌も低下した。純酸素による曝気などの対策が不可欠と考えられたのでその面でのシステムの改良も行う予定である。
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