1. 本研究は、乾燥地潅漑農地の荒地化をもたらす最大の要因である土壌塩類集積を、節水的・低コストで復旧する技術の開発を目指すものである。その原理は、従来の下降浸透水により集積塩類を洗い流し、暗渠排水により耕地外に排除するリーチング法に代わり、毛管上昇により土壌塩類を耕土表面に敷いたマルチング材に移動させ、除去するものである。 2. 一旦、0.5%NaCl溶液を飽和したシルト質土壌柱を乾燥し、塩類が表層1cm以内に集中的に集積することを確認した。 3. 地中への注水法として2タイプを考案した。(1)Jタイプ:マルチング材上部から、塩類集積部位を浸し下降浸透を生じない程度に注水した水量を、マルチング表面から蒸発させることにより、土壌集積塩類をマルチング材に移動させ除去するもの、(2)Iタイプ:地中点滴潅漑などにより土中に直接注水し、毛管上昇を発生させ塩類をマルチング材に移動させるもの、の2タイプである。 4. 室内実験の結果、両タイプとも良好な除塩機能を示した。但しJタイプでは降下浸透が発生すると表層の塩類を下層へ移動させので、厳密な水量管理が必要である。しかし現地での厳密な水量管理は困難と考えられるので、Iタイプが実用向きの注水法と判明した。 5. 12cm高のカラムによる室内実験でさえ、0.5g NaCl/cm^2の除塩用水量はIタイプでは約60mm、リーチング法では180mmで、大幅な節水が可能となることが判明した。
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