研究概要 |
地下水位の高い地点における二次元矢板前面の地盤は水替え掘削時に上昇浸透流を受け,矢板に接する土塊は上向きの力を受ける。矢板近傍の地盤表面に押えフィルターを設置することによって,地盤は浸透破壊に対する安定性が大きくなることが知られている。しかしながら,「どれだけの厚さ?」,「どれだけの幅?」の押えフィルターを設置すればよいかはわかっていない。 本年度は,押えフィルターの基本的性質を明らかにするためにまず一次元問題について考察した。そして,押えフィルターの3つの効果,フィルターの最適設計理論について整理を試みた。次に,二次元問題について,種々の条件の地盤に関して安定解析を行い,押えフィルターの最適厚さ,最適幅の考察を行った。一次元問題に関して「押えフィルターの効果」,「フィルターの最適設計理論」,二次元問題に関して「押えフィルターの最適な厚さと幅の関係」についてまとめ論文として公表した。 今後,次のような項目について考察を行う予定である。 (1)種々の条件の地盤について,押えフィルターを載せたときの安定解析を行い,限界水頭差,限界プリズムの形状を明らかにする。 (2)押えフィルターの最適な厚さ,最適な幅を明らかにする。 (3)二次元矢板前面の地盤について,押えフィルターの最適厚さ・最適幅を検証するための浸透破壊実験システムを考案する。 (4)現有の浸透破壊実験装置,間隙水圧測定装置,流量測定装置,および,今回購入した精密連続計測式水底面形状測定器一式を用いて,地盤表面が変形する時点を求める手法を確立する。 (5)数値解析結果を実験的に検証するための実験計画を立てる。 (6)典型的な条件について実際に実験を行い,数値解析結果を検証する。 そして,一次元地盤における押えフィルターの設計理論の確立,フィルターの最適設計理論の確立,二次元地盤,軸対称地盤における押えフィルターの設計理論の構築に向けて研究を進めて行く予定である。
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