研究概要 |
初年度(平成13年度)は,ウシ血管内皮細胞を用いて,ハイブリッド人工血管を作出するために,各技術的段階での問題点を克服することに費やした。まとめると,以下の点に要約される。 1)ウシ黄体からクローニングした血管内皮細胞は,たいへん貴重であるため,まず,すべての段階を,市販のウシ肺の微小血管の血管内皮細胞を入手して,培養系を確立しながら,人工血管作出に予想される問題点を整理した。 2)すなわち,ウシ肺由来の血管内皮細胞を単層培養系で継代しながら,血管構築因子であるアンギオポエチン(Anpt)-1と2を培養液に添加し,その分泌能(PCおよび血管作動性ペプチド)と形態の変化を観察した。この結果Anpt-2はPG分泌を刺激したが,ET-1やAngIIのペプチド分泌に影響しなかった。一方,Anpt-1はペプチド分泌を刺激する傾向を示した。この結果は,Anpt-1と2が,血管内皮細胞の分泌機能にも,それぞれ特異的な役割を持つ可能性を示唆している。現在,例数を重ね,現象の明確化に集中している。 3)以上の展開から,次年度は,ウシ肺由来の血管内皮細胞を用いて,血管新生因子であるVEGFやbFGFと血管構築因子であるAnptを加えた培養系で,細胞機能をさらに調べる。そのうえで,これまで微透析システムに用いてきた限外ろ過膜でできた微小キャピラリーの内側にコラーゲンでコーディングして,血管内皮細胞を付着・生存が可能かについて検討する。その後,黄体組織にこの人工血管を埋め込み,P分泌を含めた黄体分泌機能について詳細に調べる予定である。
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