(1)ヌクレオタイプ効果とは、DNAの量自体が表現型形質の発現に影響を与えることである。イネ科牧草であるペレニアルライグラスの種内における核DNA量と表現型形質との関係を調査した。核DNA量は、幼植物の葉から抽出したDNA量をDAPI染色した後、フローサイトメーターで測定した。ペレニアルライグラスの15品種間の核DNA量には統計的に有意な差が見られ、全変異のうち26%は集団間に、46%は集団内の個体間に帰属した。核DNA量は品種間で5.996pgから6.244pgまで変異した。DNA量は、種子重、細胞サイズと正の有意な相関を示したことから、わずかな差ではあってもDNA量自体が表現型発現に影響することが示唆された。 (2)イネ科牧草の北限地であるオーチャードグラスの北海道東部の自生16集団について、核DNA量と生育地の気象条件の関係を調べた。核DNA量と自生地の優占度、根雪前の最低気温との問には有意な負の相関が見られ、厳しい気象条件に生息している集団で核DA量が小さくなる傾向が見られ、核DNA量が自然選択の対象になることが示唆された。 (3)以上のことから、わずかな差ではあっても集団内の核DNA量の変異がヌクレオタイプ効果をもつことが実験的に示唆された。
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