研究概要 |
癌あるいは老化等の染色体不安定症候群の原因の1つである細胞周期チェックポイント異常の分子基盤を明らかにする目的で、分裂酵母内で哺乳動物細胞システムの再構築を試みた。具体的には、分裂酵母Cdc2遺伝子をそれぞれヒトCdc2,Cdk2,Cdk4,Cdk6分子に置き換えたものを作成した。しかしながら、Cdc2およびCdk2に置換したものは生存したが、Cdk4およびCdk6に置換したものについては致死的であると考えられた。またCdc2あるいはCdk2に置換したものも生存可能であるが、その分裂能は野生株と比較して非常に低下していた。この可能性として分裂酵母のcyclin分子がヒトCdc2あるいはCdk2は結合が弱く、またCdk4およびCdk6とは全く結合しない可能性が考えられた。従って、現在ヒトサイクリンB, A, D1をそれぞれ強発現した分裂酵母株を作成し、これらを用いて分裂酵母Cdc2をヒト型Cdc2,Cdk2,Cdk4,Cdk6と置き換えることを試みている。サイクリンBについては分裂酵母サイクリンと置き換える事が可能と考えられているので、サイクリン/Cdc2の両方ともヒト型に遺伝子置換したものを作成し、この変異体の分裂能およびチェックポイント機構の異常について解析を行っている。次年度はさらにCdc25およびWee1等のチェックポイント制御因子についてもヒト型に置換していく予定である。
|