1.マグネシウム(Mg)耐性細胞の樹立とMg輸送活性:マウス尿細管由来MCT細胞から100mMの細胞外Mg存在下で増殖する細胞株を得ていたが、さらに耐性化をすすめ、現在120mM Mgに対する耐性株が得られている。またMg-fura蛍光色素を用いた細胞内Mg濃度測定法により細胞のMg輸送活性を測定し、耐性株では細胞外ナトリウムイオン依存性のMg排出活性が亢進していることが確認された(東京医大、小西・渡辺博士との共同研究)。 2.Mg輸送蛋白質の候補遺伝子のスクリーニング:Mg耐性細胞と野性株細胞より各々mRNAを抽出し、サプレッション・サブトラクション・ハイブリダイゼーション法により耐性細胞に特異的に発現している遺伝子を検索した。各々1μgのpoly(A)^+RNAを材料としたサブトラクションにより約1000個のコロニーが得られ、このうち192クローンについてディファレンシャル・ハイブリダイゼーションを実施し、22個のクローンを選別して塩基配列を決定した。12クローンが未報告の遺伝子であった。また、10クローンが既知の機能が同定されている遺伝子であった。その内3クローンは膜タンパク質であるaquaporin-1(AQP1)のcDNAの異なる部位に相当していた。さらにDNAマイクロアレイを用いて両細胞の遺伝子発現を比較し、Mg耐性細胞に特異的に発現が増加している遺伝子の解析を行っている。 3.Mg輸送蛋白質の候補遺伝子の発現:得られたAQP1のcDNAを動物細胞発現ベクターに組み込み、野生体細胞に遺伝子導入した。しかし、Mg耐性の獲得や、Mg排出活性の増加は認められず、Mg輸送蛋白質ではないと結論した。残りの候補遺伝子についても順次解析を進めている。
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