前年度までの研究で、D40遺伝子は広範なヒト培養癌細胞、原発癌に発現していることが明らかになった。そこで今年は癌患者リンパ球からのD40特異的細胞障害性T細胞の検出を試みた。 D40蛋白質のアミノ酸配列の中でHLA classI分子に結合すると予想されるpeptideを合成し、これとD40陽性癌患者リンパ球との間で混合培養(MLPC)を行った。これにより、D40に特異的な細胞障害性Tリンパ球(CTL : Cytotoxic T lymphocyte)の誘導活性を検討した。 D40の発現が陽性であった原発癌患者から、HLA A-24である患者について、患者リンパ球とD40ペプタイド、A24陽性C1R細胞との間でMLPCを行った。5種類のD40ペプタイドの内、3つをAグループとし、残りの2つをBグループとした(このうち一つは置換型)。一人の患者からのリンパ球は2つにわけ、一方をAグループに対し、他方をBグループに対しMLPCを行った。約40名のD40陽性かつHLA A-24である患者について、MLPCを行った後、細胞傷害性T細胞(CTL)の活性を検討したところ、AグループのD40ペプタイドについてはCTL活性が検出された患者は認められなかった。しかし、4名の患者でBグループのD40ペプタイドについてCTL活性が検出された。そこで、BグループのD40ペプタイド2つのうち一つをB1、もう一つをB2ペプタイドとし、CTL誘導活性を検討した。その結果、3名の患者からB2ペプタイドについて対するCTLを誘導する活性が検出された。B1ペプタイドについて対するCTLを誘導する活性はいずれの患者リンパ球においても検出されなかった。これらの患者のリンパ球からはB2ペプタイドについてCTLを誘導する活性が再現性をもって検出された。
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