研究概要 |
脳マラリア感受性遺伝子の有力な候補としてTNFαプロモーター領域多型が注目されている.そこで,「熱帯熱マラリア原虫陽性率の高い集団では,脳マラリア感受性遺伝子が淘汰される」という仮説を立て,熱帯熱マラリア原虫陽性率が異なる集団間のTNFαプロモーター領域多型を解析することにより,この仮説を検証することを研究目的とした.1)遺伝解析の進行状況:マラリア流行性の異なる6カ所のヴァヌアツ島嶼ヒト集団を対象とし,フィルターペーパー血液サンプル1300検体のDNA抽出を完了した.これらのサンプルを用いて,TNFαプロモーター領域多型の解析を開始した.現在,MEGABACE1000によるDNAシークエンス法を用いた解析を立ち上げ,プロトコールを作成中である.2)マラリアに関する疫学データ解析の進行状況:2001年8-9月,パプアニューギニア国東セピック州の3カ所のコミュニティ,合計2000人についてマラリア疫学調査を施行し,血液標本を収集した.パプアニューギニア沿岸部,平原部,島嶼部はヴァヌアツにくらべ原虫陽性率が高いだけでなく,マラリアによる死亡率が高いことが知られている.ヴァヌアツ集団とパプアニューギニア集団のTNFαプロモーター領域多型を比較することで,上記仮説のみならず,「マラリアによる死亡率の高い集団では,脳マラリア感受性遺伝子が淘汰される」という仮説も検証できる.平原部であるKiniambu,Witupeでは,5歳未満小児の熱帯熱マラリア原虫陽性率はそれぞれ36%,15%であったのに対し,丘陵部であるJawiaでは6%に留まった.一方,三日熱マラリア原虫陽性率はKiniambu 17%,Witupe 12%,Jawia 14%と比較的同程度の原虫陽性率を示した.さらにWitupeでは四日熱マラリア陽性が6%認められた.これらの集団の遺伝子解析もヴァヌアツ集団と平行して行っていく予定である.
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