研究概要 |
組織侵入性の高い緑膿菌PA01株を親株として、gene replacement法を用いて、MexA-MexB-OprM、MexC-MexD-OprJ、MexX-MexY-OprMの3つのeffluxシステムのdeletion mutant、および各ユニット(MexBなど)のdeletion mutantを作成した。変異株の作成は、海外共同研究者であるKeith Poole(Queen's大学、カナダ)と共同で行なった。これらの菌株の組織侵入性について、すでに報告したMDCK(Madin-Darby canine kidney)細胞モノレイヤーシステムを用いたpenetration assay (Y. Hirakata, et al. J Infect Dis 2000)、BALB/c系マウスを用いた内因性敗血症モデル(Y. Hirakata, et al. Infect Immun 1993)で評価を行なった。以下の新しい知見が得られ、その結果はJ Exp Med誌に掲載された。 (1)MDCKモノレイヤーシステムにて親株と比較してMexA-MexB-OprM変異株の透過性は極度に低下していた。 (2)gentamicin invasion assayおよび電子顕微鏡(透過型および走査型)を用いて、親株とMexA-MexB-OprM変異株のMDCK細胞表面への付着性および侵入性について比較検討した結果、親株は感染後30分ほどで侵入し、一方MexA-MexB-OprM変異株は侵入に3時間を要した。 (3)親株は内因性敗血症モデルにおいて、経口投与後、マウス腸管に定着増殖し、cyclophosphamide投与により血管内に侵入し全身性敗血症を惹起し、100%の死亡率を呈したが、MexA-MexB-OprM変異株はマウスに敗血症を起こさなかった。 (4)親株の培養上清の存在下でMexA-MexB-OprM変異株を感染させると組織侵入性の回復が得られた。 (5)MexA-MexB-OprM変異株にmexA-mexB-oprM遺伝子をcomplimentすると組織侵入性の回復が得られた。
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