研究概要 |
昨年度確立したルシフェレース遺伝子をリポーターとして有するSelf-inactivating (SIN)-HIVを使用して、種々のヒト細胞株の感染前期過程におけるHIV感受性を調べた。その結果,ヒトT細胞株間でも感染前期過程において感受性に10倍以上の差があることが判明した。特に、HUT78細胞株においてそのHIV抵抗性は顕著であった。さらに本年度は末梢リンパ球においてもHIV感染に対する阻害が存在していることを確認し、このような感染抵抗性が広くヒト細胞に存在していることが示唆された。また、種々の感染前期過程をモニターすることが可能なPCRを使用してより詳細に検討したところ、主に逆転写レベルでその阻害がかかっていると結論された。さらに、個々の細胞レベルでのHIV感受性の差異を調べる目的で、本年度はリポーター遺伝子としてGFPを有するSIN-HIVを作製した。その結果、ルシフェレース遺伝子を有するHIVとほぼ同様にHIVに対しHUT78細胞が比較的耐性であることが判明した。また旧世界サル、特にアフリカミドリザル由来細胞株であるCV-1、B95a、Vero細胞株はHIV感染抵抗性細胞株であり、これらのヒト以外霊長類における感染抵抗性についても現在解析を進めているところである。このような結果をふまえて現在、細胞由来感染阻害因子の探索を行っている。HIV感受性細胞であるHOS細胞にヒトリンパ球由来cDNAライブラリーレトロウイルスを導入し、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)をリポーターとして有するHIVを感染させ、ガンシクロビル存在下で培養し、HIV感染抵抗性細胞を樹立中であり、これらの細胞に導入されたcDNAを今後クローニングしていく予定である。
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