研究概要 |
前年度に引き続き、農薬類化合物のGS-Xポンプ遺伝子発現への影響を検討した。まず、nonRIノーザンブロット法によるmRNAレベルの検出感度を上げるため、MRP1遺伝子断片をRT-PCR/TAクローニング法でRNApolymerase promoterを持つベクターにクローニングした。これより得られるnonRI標識アンチセンスRNAプローブを用いた事で、MRP1遺伝子発現の検出感度が数倍程度上がった。この検出系で、クロロフェノキシ酢酸化合物(2,4,5-T、2,4-D、4-CPA、MCPA、2,4-DB、CPMP)で長期間暴露した細胞(高GS-Xポンプ活性型ヒト白血病細胞株HL-60/R-CP及びその親株HL-60)において、MRP1遺伝子発現に変化があるか検討した。2,4,5-T、2,4-DB、MCPA、CPMPによってやや発現が上昇する傾向が見られたが、顕著な変化ではなかった。詳細については、統計学的検討が必要と思われた。また、対象化合物を代謝活性化した場合での影響を検討した。ラット肝臓マイクロソーム画分の存在下で、クロロフェノキシ酢酸化合物の細胞毒性を測定したところ、いずれの化合物でも代謝活性化による細胞毒性の顕著な変化は認められなかったが、HL-60/R-CP細胞では逆にprotectiveな傾向が見られた。同様に、カーバメイト系農薬(殺虫剤NAC、除草剤MCCおよびChloro-IPC)について、細胞毒性を検討した。これらの化合物はやや毒性が高く、3日間培養法でIC50が数10μMであった。この方法では細胞間の差はなかったが、24時間法で代謝活性化の影響を検討した実験では、NACがHL-60のみ毒性が数十倍増加した。この時細胞のviabilityに変化はなかったので、ミトコンドリア酵素の特異的阻害によるであり、HL-60/R-CPでは高レベル細胞内グルタチオンが耐性に関係したものと示唆された。これらに関して詳細な検討が必要と思われた。
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