研究概要 |
<初年度実績> 脾臓中に存在するリンパ球に主眼をおき、リンパ球に存在するメタロチオネイン(MT)の果たす役割について、MT欠損マウスを用いて検討し、以下の知見を得た。 表面抗原の検索 成熟したリンパ球が発現する表面抗原(CD45R/B220,CD3,CD4,CD8)を測定したところ、コントロールマウスとMT欠損マウスとの間に、差はみられなかった。この事から、脾リンパ球の成熟課程には、MTが関与しない事が示唆された。 増殖応答性 脾細胞を各種のmitogenで刺激し、増殖応答性について検討したところ、Bリンパ球のmitogenであるLPSで刺激した場合には、MT欠損の影響はみられなかったが、Tリンパ球増殖因子である抗CD3(ε)抗体やConcanavarin Aで刺激をすると、MT欠損マウスでは、細胞増殖が抑制されていた。又、脾臓から精製したTリンパ球を用いた場合でも、同様に細胞増殖が抑制されていた。これらの事から、MTはTリンパ球の増殖応答性に関与している事が示唆された。 IL-2の産生 Tリンパ球増殖因子で脾細胞を刺激後、培養液中へのIL-2蛋白質の分泌量を経時的に測定したところ、MT欠損マウスでは、刺激後12、24時間目のIL-2産生量が、有意に低下していた。さらに、MT欠損マウスの脾細胞の培養液中に、T細胞のmitogenと同時にrecombinant IL-2を添加すると、増殖応答性がコントロールマウスのレベルまで改善された。 これらの事から、MT欠損マウスのT細胞をmitogen刺激した際の増殖応答性が抑制されている原因として、刺激後初期に産生されるIL-2産生量が少ない事、刺激後のIL-2産生が遅れる為である事が示された。
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