不妊治療の普及は歓迎すべき出来ごとであるが、その一方で多胎妊娠の急増をもたらした。予期せぬ多胎妊娠は、養育者に対して経済的・身体的・精神的にさまざまな形で負担を強いる事になる。一般に、多胎児は早産・未熟児として出生する事が多いが、例えば母子手帳に掲載されている身体発育曲線ないし運動発達通過率曲線は特に多胎児を考慮して作成されていないため、多くの多胎児は発育不良とみなされている。従って、養育者達は不安を抱くことも多い。その一方で、実際に育児指導にあたる者も適切な情報を持たない事が多く根本的な解決は計られていない。無用な混乱を招かぬためには、経験や憶測に基づいたアドバイスではなく、統計的な数値を根拠に持った資料を作成する必要がある。こうした背景のもと、今回多胎児の母親の会の協力を通じて、全国規模で多胎児の身体発育、運動発達、精神発達等に関する情報を収集した。研究期間内に、(1)乳幼児期・学童期の身体発育基準値、(2)乳幼児期運動発達・言語発達の通過率曲線、(3)基本的な精神発達・問題行動等の特徴が明らかにされる。そして、単胎児との異同が明らかにされるとともに、多胎児に固有な特徴が明らかにされる。2309名の母親に質問紙を郵送した。平成14年3月現在789名の回答を得ている(回収率34.2%)。入力済みのデータ600組の性の組み合わせの内訳は、男男239組、女女236組、異性125組であった。年齢階級は乳幼児316組、小学生204組、中学生80組であった。男女の人数の偏りのないデータであると同時に、ワインベルグの分差法により推定される卵性別の割合もこの年次間での二卵性の頻度および増加を反映するものであった。以上より本対象は比較的偏りの少ない集団と考えられる。3月末までに第1回の回収は終了する。今後これらの分析を実施すると同時に、未返送者に対しては4月中に再度の協力依頼予定している。
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