1.これまでにわれわれが全身性エリテマトーデス(SLE)との関連を見出したFcγ受容体遺伝子(FCGR2B)-I232T多型につき、病態発症との関連の機序を探るため、FCGR2B欠損ヒトB細胞株(ST486)に各アリルを遺伝子導入し、B細胞受容体との共架橋による活性化シグナルを、細胞内Ca^<2+>濃度の測定により検討した。この結果、SLEとの関連を有する232Tアリル導入細胞は、232I導入細胞と比較して、FCGR2Bに由来する抑制性シグナルが減弱していることが観察され、SLEにおける過剰なB細胞活性化を説明しうる知見と考えられた。さらに、この現象の機序を解明するため、種々の生化学的解析を加え、232Tアリルでは、raftへの局在、FcγRIIb蛋白のチロシンリン酸化、SHIP動員のいずれもが232Iアリルと比較して低下を示すことを示唆する予備的な結果を得た。 2.同様に過去にわれわれがSLEとの関連を見出したB細胞シグナル伝達分子であるCD19の3'非翻訳領域のGTリピート多型と、末梢血B細胞におけるCD19mRNAレベルの関連を、定量的RT-PCRを用いて検討した。検体数が少なく、統計学的有意差には達しなかったものの、SLE関連アリルを有する個体では、有しない個体に比べ、平均20〜30%のCD19mRNAレベルの低下が検出された。これは、過去にマウスにおいて自己抗体産生などの表現型と関連しうることが示されている程度の発現量の変化に相当することから、ヒトにおいても、SLE発症との関連する可能性が示唆された。
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