研究概要 |
細胞内でのα-シヌクレイン蓄積機序の検討に当って,同タンパクの発現調節と分解抑制の二つの側面から検討を加えた. α-シヌクレインの発現調節に関しては,培養ヒト・アストログリアにおいてインターロイキン-1(IL-1)が本遺伝子の転写制御を介して発現を促進すること,また,血清を除去した培養液に換えることによって同様の発現促進が起こることなどを明らかにした.アストログリアにおいては非刺激状態で、同じファミリーに属するβ-シヌクレインの発現も見られたが,その制御機構は不明である.また,神経系細胞以外でのα-シヌクレイン発現についても検討した結果,血管内皮細胞・平滑筋細胞においてmRNAとタンパクが発現していることを,組織と培養細胞の両レベルで明らかにすることができた.これらの細胞における発現調節機構については明らかになっていないが,現在培養細胞を用いて検討中である.これらの細胞におけるシヌクレイン発現の生物学的意義に関しても,細胞増殖やアポトーシス,血球細胞との相互作用,炎症・血栓関連遺伝子発現などの点から検討を行っている. α-シヌクレイン分解機構に関しては,IL-1などが関与する細胞シグナル伝達機構の変化やプロテアゾーム阻害剤などの影響について検討を加えて来たが,いまだ明確な細胞内での分解調節機構の同定に至っていない.更に,プロテアゾームやシグナル伝達に関連する遺伝子を強制発現させた場合の影響について検討を進めて行く予定である.
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