研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する有効な治療法が切望されている。我々はすでにcGMPアナログが急性ラジカル毒性から運動ニューロンを保護すること、及び、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬の投与により慢性グルタミン酸毒性による運動ニューロン死が抑制されることを見出し、PDE阻害薬によるALSの新たな治療法の可能性を提案している。本研究では、ラット脊髄初代培養系を用いて各種PDEアイソザイム選択的阻害剤の運動ニューロン保護効果を解析し、より選択的なALS治療の可能性について検討する。 培養脊髄ニューロンを低濃度(30μM)のグルタミン酸とグルタミン酸トランスポーター阻害薬に24時間曝露すると、選択的運動ニューロン死が認められた。このとき培地中にアイソザイム非選択的PDE阻害剤であるアミノフィリンを加えておくと、濃度依存性に、この運動ニューロン死が抑制された。同様の保護効果はPDE5,6,7,8,10,11の選択的阻害薬ジピリダモールやPDE5,6選択的阻害薬ザプリナストにも認められたが、PDE1の選択的阻害薬ビンポセチン、PDE2の選択的阻害薬EHNA、PDE3の選択的阻害薬ミルリノン,PDE4の選択的阻害薬ロリプラムには認められなかった。 以上の結果から、PDE阻害剤には運動ニューロン保護効果があり、ALS治療薬としての可能性が示唆された。この保護効果にはPDEのアイソザイムのうち、PDE5もしくは未同定の(新規の)アイソザイムが関与していることが示唆された。
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