マクロファージの分化過程においてPPAR_γリガンドとしての作用をもつトログリタゾン(チアゾリン誘導体)が、細胞外マトリックスの一つで活性化マクロファージの指標となるオステオポンチン(OPN)の遺伝子発現を抑制する機構を解析した。ルシフェラーゼアッセイによって、トログリタゾンによるOPNプロモーターの活性抑制には、-1000から-970の間のA/T配列(5^1-AATTTCCTTA-3^1)が必須であることが明らかとなった。また、この配列をチミジンキナーゼ遺伝子プロモーターの上流に接続したコンストラクトを作成した。このコンストラクトの活性は、トログリタゾンあるいはPPAR_γの発現ベクターとの共発現によって著明にdownregulateされた。したがって、5^1-AATTTCCTTA-3^1は、トログリタゾンによるOPNプロモーターの活性の抑制に、必要かつ十分であることが判明した。次にOPN-1000から-980のオリゴヌクレオチドをプローブとしてゲルシフトを行った結果、この配列には核蛋白が結合し、そのDNA結合性はトログリタゾンによって明らかに抑制された。さらに、PPAR_γを発現するアデノウイルスを感染させ、PPAR_γを過剰発現させたCOS細胞より抽出した核蛋白を用いたゲルシフトアッセイでは、PPAR_γの過剰発現により、DNA結合が抑制された。スーパーシフトアッセイではこの核内因子は抗PPAR_γ抗体でスーパーシフトは認められなかったがホメオ蛋白の結合配列を過剰に加えると、結合が抑制されることからこの核内因子はある種のホメオ蛋白であることが示唆された。以上より、PPAR_γリガンドはOPNプロモーター上の5^1-AATTTCCTTA-3^1に結合するホメオ蛋白の結合を阻害することによってOPNの発現を制御していることが明らかとなった。
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