1.実験的心不全モデルにおけるHO-1の発現とその意義の検証 ラット冠動脈狭窄モデルおよび肺高血圧右心不全モデルなどの異なる心不全モデルを用い、正常心機能状態および異なる重症度の心不全状態下にある心血管系におけるHO-1の発現を比較した。さらに、これらのモデルにおいてHO-1の誘導及び阻害を試み、HO-1反応系のこれらの病態下での役割を検討している。肺高血圧モデルの成績については本年度の研究期間中に欧州心臓会議、米国心臓学会で演題採択され、J. Antioxidant. Redox. Sgnalingに掲載の予定である。 2.ヒト心不全の診断及び治療へのHO-1の応用の試み 2-1)臨床心血管試料の検討 心内膜下心筋生検試料を用いて不全心での心筋の病的変化とHO-1発現の程度との関係を免疫組織化学的手法を用い病理学的に主に検討した。HO-1は心筋の変性が進行した試料において強く発現され、BNPに類似した挙動を示した。 2-2)心不全患者でのCOHbの測定 HO-1反応産物の一つであるCOと血中ヘモグロビンとの比較的安定な産物であるCOHbを動脈血液ガス分析時にオキシメトリーを施行することにより測定し、HO-1の心不全患者での誘導の程度を間接的に判定した。非代償期の心不全と治療による改善後のCOHbの変化を比較したところ、心不全の増悪時にCOHbの上昇が認められた。 第2項に関しては研究年度に米国心臓学会で演題採択され発表した。また、次年度に開催される日本循環器学会総会において発表を行い、討論される予定である。
|