研究概要 |
交感神経除神経や心筋血流が不均一であることは致死性不整脈の原因の一つであると考えられている.これらの不整脈の原因はカテーテルによる心筋焼灼では現在でも十分に治療できない.シンクロトロンから得られる重粒子線は,2次元方向に加えて深さ方向にもその線量を限局可能であるという3次元限局所照射という特徴を利用した低侵襲癌治療として用いられている.家兎心筋において重粒子線照射により限局した焼灼と局所心臓交感神経除神経が可能かどうか検討し,虚血心筋における不整脈治療として適応できるか評価した.野兎10羽に,放射線医学総合研究所の粒子加速器(HIMAC)を用いて重粒子線の照射を行った.加速粒子は炭素イオン(拡大Bragg peak beam 6cm,290MeV/u),照射線量90Gy,照射野は前胸部20×20mm,到達深度20mmとした.心機能評価,組織学的評価,^<125>I-metaiodobenzylguanidin(MIBG)によるauto radiographyで交感神経除神経評価を照射後4週に施行した.組織学的には左室自由壁外側1/2に限局して心筋壊死を認め,auto radiographyでは照射部に一致したMIBGの取り込み欠損を認め,均一な交感神経除神経を確認した.照射部位と他の左室前壁の非照射野との間に収縮能や心筋血流に差を認めなかった.次に8羽の家兎に対しマイクロスフェアー法により心筋虚血を作成し,2週間後に4羽に対し重粒子照射を行った.虚血作成後4週にVT誘発試験を施行した.重粒子線照射家兎(n=4)において,VT誘発は阻止された.しかし,重粒子線非照射家兎(n=4)は全て誘発された。重粒子線は照射局所の心外膜側に限局した焼灼が可能であり,均一な局所心臓交感神経除神経領域を作り出せる.そして,虚血心筋における不整脈治療として適応できる.
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