研究概要 |
ケモカイン(MCP-1)は単球集積効果だけでなくアポプトーシス抑制・内皮NO遊離作用を介して内皮保護に働くことが知られている。我々はラット微少冠動脈内皮細胞にはVEGF・VEGF受容体が発現し、周囲の心筋細胞はVEGFを合成することを見いだし、L1-βは非常に強くこれらVEGF・VEGF受容体遺伝子発現を亢進させることを報告した。このようにサイトカイン・ケモカインは虚血部位での血管再生メカニズムの重要な要因のひとつと考えられるがその詳細は明らかでない。今回我々はMCP-1受容体であるCCR2欠損マウス、IL1-β欠損マウス虚血下肢での血管新生効果を検討した。 CCR2欠損マウス、IL1-β欠損マウスいずれにおいてもレーザードップラーで評価っされる虚血下肢での血流量の回復は著明に減弱していた(3週後には40%減弱)。免疫組織染色では新生毛細血数は減少していた。MCP-1およびIL1-βの投与にて、虚血下肢での血流量減少は回復した。虚血部に集積する単球・リンパ球数も減少しており、末梢血のFACSではCCR2欠損マウス、IL1-β欠損マウスいずれにおいてもCD34-,FLK+hematopoietic cellの骨髄からの動員が減少していた。これらの結果はケモカイン(MCP-1)・炎症性サイトカインL1-βは骨髄からの血管芽細胞の動員、局所での血管新生因子の供給の減弱を介して血管新生に関与することが示唆された。
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