研究概要 |
ロタウイルス感染後、下痢以外の疾患を示した症例が,藤田保健衛生大学病院他4病院において9症例を確認した。無熱性痙攣を起こした3症例、死亡した2症例、コレステロール側鎖切断酵素欠損症の基礎疾患があり、急性脳症のため死亡した1症例、慢性肉芽腫症の患児で、長期間ロタウイルスを排泄した1症例、髄膜炎を起こした1症例、および肥大型心筋症による心不全がロタウイルス感染による著しい脱水により、急速に進行した1症例について、髄液、血清を得、RT-PCRによりロタウイルス遺伝子の検索を行った。現在のところ、特異的なロタウイルス遺伝子の検出には至っていない。 また、SCID患者において、10ヶ月間ロタウイルスを排泄した症例について、遺伝子のリアレンジメントを検出しその解析を行った。経時的に採取した便由来のRNAプロフィル調査と培養細胞での分離を終えた。リアレンジメントは非構造蛋白質遺伝子に集中していた。NSP1遺伝子では、リアレンジメントを起こした遺伝子は、本来の長さ(1,569bp)の遺伝子に対応する産物しか得られなかった。NSP3遺伝子では、本来1,072bpの遺伝子が終止コドン後30bp下流から、ORF(塩基no.23-962)の塩基no.39から3'末端まで重複し、2,024bpとなっていた。NSP5遺伝子では、本来665bpの遺伝子が終始コドンTAA(塩基no.611-613)直後から、ORF(塩基no.22-613)のno.45から(pl8)、no.57から(stool)、no.57から始まり、no.140-146を欠失して、3'末端までと重複し、それぞれ、1,212bp、1,199bp、1,175bpの全長を有するリアレンジ遺伝子が生じていた。いずれの遺伝子においても、本来のORFは維持されており、発現タンパク質に変化はないものと思われる。
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