研究概要 |
オージェ電子は,10nm程度の短飛程で高LETの特性を持つため,がん細胞の核内へターゲティングできれば,極めて殺細胞効果が高い.アンチセンスDNAは,核遺伝子の特定塩基配列と相補的に結合するため,これをオージェ電子放出のアイソトープで標識し,細胞内にターゲティングすれば,ハイブリッドした核酸の特定の塩基配列部位でオージェ電子が切断する.アンチセンス分子の薬効機序は,主に酵素的切断であるが,アイソトープ標識アンチセンスDNAは,相乗効果により薬効の飛躍的向上の可能性を秘めている. モデルのmdr 1アンチセンスオリゴヌクレオチドを合成し官能基を導入した.antisense S-oligo 15merを,通常のフォスフォアミダイト法による固相自動合成により得た.その際,5'末端には,炭素鎖6個(C6)のスペーサーを介してチオール基を導入した.この化合物と過剰(10当量)のメアーズ試薬とを反応させた結果,生理的pH条件下で結合反応は進行し,目的とする化合物が得られた. アドリアマイシン感受性のP388野生株とアドリアマイシン耐性のP388変異株を標識オリゴマーのモデルとすることの妥当性を検証するため,P糖タンパクの発現をキャリアである^<99m>Tc-MIBIを用いて細胞への取り込みを比較した.耐性株では野生株より有意に細胞内の^<99m>Tc-MIBI集積が低い結果となった.また,mdr 1のmRNAの比較では,耐性株が野生株より多くのmRNAが認めちれた.したがって,タンパクレベルでもメッセンジャレベルでもモデル間の差があると考えられた.
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