研究概要 |
1.第1染色体に連鎖する精神分裂病患者家系の検索 本邦では遺伝子連鎖解析のための精神分裂病家系のDNAサンプル集めは実質的に困難であり、多くの家系を持つ海外の研究室との共同研究を試みた。Peltonenらの持つフィンランド人精神分裂病家系において第1染色体に連鎖する家系があるかどうか共同研究として検索を行ってもらった。その結果1番染色体長腕上に2つの遺伝子マーカーに連鎖する2家系を同定した。それらは染色体1q32-q42の範囲内に位置するため、本プロジェクトのBRAL1,BCAN両遺伝子は除外されたが、第1染色体上にも精神分裂病家系の連鎖する座位が複数存在することを示し、引き続き他の精神分裂病家系の連鎖解析を行うことの重要性を示唆している。 2.BRAL遺伝子の発現解析 マウスで相同遺伝子Bral1をクローニングし、さらにBral1特異的抗体を作成することによりその発現を詳細に調べた。その成果は論文化(Mol.Cell.Neurosci.)することが出来た。Bral1 mRNAは神経細胞が発現しており、そのタンパク質の発現は中枢神経ランビエ絞輪に局在していた。さらにその局在はヒアルロン酸(HA)結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのversican V2とcolocalizeすることを示した。ランビエ絞輪は神経の活動電位の発生と跳躍伝導に重要であることが知られている。我々はBral1が絞輪の細胞外部において、陰性に荷電したヒアルロン酸にversicanコアプロテインを固定し、電位依存性NaチャンネルによりNaイオンが細胞内外に出入りし活動電位を生ずるための細胞外環境を整えている役割をしていると考えている。以上の内容は学会・シンポジウムにも取り上げられ議論された。 リンクモジュール遺伝子に共通したモチーフを指標として、新規リンクモジュール遺伝子である脳リンクプロテインBral2遺伝子をクローニングした。マウスBral2のmRNA, proteinレベルの詳細な発現解析と免疫組織化学的解析より、Bral2は神経核においてbrevicanと共存し、その機能維持に重要であることを見い出した。これは本年度日本生化学会において報告された。
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