研究概要 |
1.目的:本研究は,大脳皮質層形成過程とりわけ神経芽細胞移動の分子機構を明らかにするため,この過程で機能する重要な転写調節関連因子を新たに同定し,機能解析することを目指すものである.そこで,大脳皮質層構造が形成される際に機能する新規重要遺伝子を,中枢神経系の発生に関与することが最近になって判明した新たな核内受容体遺伝子群(NR2Eサブファミリー)の中から探索することにした. 2.方法:DNA結合ドメインにおける配列比較をNR2E型核内受容体間で行い,分子進化的に取りうる可能性のある複数の配列を想定する.つぎに,これらアミノ酸配列に対応する塩基配列を作成する.これに基づいて設計した縮重プライマーを利用して,層構築形成期にあるマウス胎仔脳由来全cDNAsのほか,成熟マウス眼球,成熟脳組織由来全cDNAsを鋳型とするdegenerative PCRを施行する. 3.結果:現在までのところ,期待される塩基長を有する産物1267クローンについて解析したが,目的とする胎生期マウス大脳皮質層構築期にある神経芽細胞において発現する新規核内受容体を見出すまでには至らなかった.しかし,網膜光受容体特異的核内受容体として知られるPNRの2番目のZnフィンガーモチーフに対して極めて類似した配列をもつ新規核内受容体の存在が示唆された.それに加えて,PNRが,網膜のみならず胎生期や生後の脳において発現していること,選択的スプライシングによって生じる4種の新たなアイソフォームをもつことをはじめて見出した.
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