今回の研究では集合尿細管から水を再吸収する機構上バゾプレシンの最終効果器として重要な機能を果たすアクアポリン2を過剰発現するトランスジェニックラットを作製し、バゾプレシン過剰症であるSIADHの病態に類似した動物モデル系を樹立することが目的である。 トランスジェニックラットの作製については、われわれはバゾプレシンを過剰発現するトランスジェニックラットを作製しその報告を2002年に行った。今回のモデル動物においてもバゾプレシン過剰発現ラットの作製方法に準拠し研究を進めている。DNAコンストラクトにはモデル動物において生理的に発現しているアクアポリン2との鑑別を容易にする目的のためごく一部の構造が異なるヒトアクアポリン2遺伝子を使用しデザインした。また、アクアポリン2の発現を強制的にまた半定量的に誘発できるようバゾプレシン過剰トランスジェニックラットで使用したものと同様にmetallothionein-Iプロモーター遺伝子を付加した設計とした。さらに、腎尿細管に組織特異的発現を惹起する目的でこの構造の上流にアクアポリン2のプロモーター遺伝子を付加したコンストラクトを最終的に作製することが重要となるが、現在有効性を確認できる組織特異性プロモーターに関する知見が十分ではない状況であるため、その基礎的検討を進めている段階である。この検討が終了した時点で、これらを付加したヒトアクアポリン2遺伝子を前核期受精卵に注入し、アクアポリン2過剰発現トランスジェニックラットを作製する予定である。
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