研究概要 |
1 ES細胞 本研究の目的は、下垂体の初期発生に関与すると想定される種々の転写因子をES細胞に発現させ、ES細胞が下垂体の方向に分化しないか検討することである。本年は、下垂体の初期発生に関与する種々の転写因子がテトラサイクリンにより発現制御できるES細胞系の樹立を試みた。もととなるES細胞として、フィーダー細胞なしで増殖可能で、かつテトラサイクリン制御下にOct-3/4の発現誘導が可能なZHTc6 ES細胞を丹羽博士(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター)から供与いただいた。 2 ES細胞への転写因子導入用ベクターの作製 このZHTc6細胞のゲノムに組み込まれたOct-3/4cDNAを、下垂体発生の初期に発現する各種転写因子をコードするDNAで置き換えるためのベクターの作製を行なった。RT-PCRで下垂体よりPtx1,Ptx2 cDNAを得たのち、この末端にHis-tagをつけた。塩基配列を確認し、his-tagがin frameとなっていることを確認した。in vitro translationで妥当なサイズの蛋白が合成されるか現在確認中であるが、確認後には、このcDNAを相同組み換えにより、Oct-3/4と置換し、テトラサイクリン制御下にptx-2,Ptx3が発現するES細胞の樹立を試み、その発現により、ES細胞の形質に変化が生じないか検討したい。 3 細胞形質の変化の検討 下垂体では種々の転写因子、ホルモンが時間特異的に発現することが明らかになっており、これらは下垂体分化マーカーとして使用できると考えられる。外因性転写因子発現後、ES細胞が下垂体方向に分化するか検討するため、Ptx1,Ptx2を含め、種々の転写因子、ホルモンmRNAのRT-PCR測定系の確立を2と平行してめざしている。
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