研究概要 |
Axin遺伝子は私共教室の池田聡らが広島大学医学部生化学第一教室の菊池章教授らとの共同研究で発見したWntシグナル伝達経路の制御因子である(EMBO J.17(5),1371-84,1998)。最近、池田らの研究成果から大腸癌における癌抑制遺伝子として働いている可能性が強く示唆されている(Oncogene19(4):537-45,2000)。またAxamはこのAxinの作用を増強する遺伝子として教室の角舎学行らが同定した(J.Biol.Chem.275(47):37030-37,2000)。従って私の専門領域である乳癌においてもAxamの異常がWntシグナル伝達経路の異常を導き、発癌に関与する可能性が高いと考え、本研究を開始した。 現在までに私共の教室で治療した乳癌患者より得られた腫瘍組織検体あるいは細胞診検体を用い、UltraTech HRP Streptavidin-Biotin Universal Detection System(Immunotech社)による抗Axam抗体を用いた免疫組織(細胞)化学的染色を行い、Axamの腫瘍内発現の有無を検討中である。これまで抗Axam抗体の希釈倍率や染色前処置(マイクロ・ウエーブ処置など)の可否についての検討に時間を要したが、Axam抗体の染色性については陽性所見を示す細胞は細胞質が穎粒状から彌慢性に茶色に染色され、これはいくつかの培養細胞でも同様であった。即ちAxamが正常組織と比較して乳癌腫瘍細胞に広く発現する事は確認できた。しかしほぼ全ての癌細胞に発現しその発現強度の意味する所(過剰発現と言えるか)が評価できていない。今後、Axamが関与するのは発癌早期の過程であるか、あるいは癌が進展・増殖した過程で関与するのかを、乳癌進行度やリンパ節転移度、あるいは他の良性疾患などとの比較から、Axam染色分布や染色強度から解析を加えて報告する予定である。
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