研究概要 |
1.中性脂肪粗乳化エマルションのリンパ指向性に着目し,エマルションの粒子径を調整することでマイクロバブルによらない新しい超音波造影剤を開発し,その作製条件に対する製剤学的検討を行った. 2.ウサギを用い,リンパ節炎症性腫脹モデルおよびリンパ節転移モデルを作成し,作製した造影剤をそのリンパ節の近傍に局所注入し,造影剤のリンパ節内での局在を病理組織学的に検討するとともに,所属リンパ節の超音波造影パターンを解析し,リンパ節転移術中迅速診断の臨床応用の可能性について検討した. その結果,1.リンパ指向性超音波造影剤を作製するには,超音波乳化出力を120W,脂質配合比を10%にするとエコー輝度が最も高くなることが判明した.この新組成超音波造影剤は,マイクロバブルと違い,作製後1週間室温保存してもエコー輝度の低下は全く認めず保存性は良好であった. 2.炎症性腫脹モデルでは,造影剤はリンパ洞内に僅かに認めるのみでほとんど残っていなかったが,リンパ節転移モデルでは,造影剤は辺縁洞および髄洞の保たれている部分に流入を認め,また,腫瘍に置き換わっていない髄索内にのみ存在していたことを確認した. 3.この造影剤によるリンパ節の超音波診断は,造影開始30秒後からエコー輝度の上昇を認め,1分〜1分30秒後をピークとして5分間以上持続することから,術中の迅速診断としての条件を満たしていることが確認できた. 4.その造影パターンは,炎症性腫脹ではほとんどhomogeneous enhancementであり,リンパ節転移は,spotty, linear, radialまたはring-shaped enhancementと多彩なパターンを示すが,homogeneous enhancementはないことから,良悪性の鑑別が可能であることを明らかにした.
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