研究概要 |
TNP-351は抗癌剤として開発された新規葉酸拮抗剤であり,in vivoで各種癌に対し有効とされたが,in vitroで十分な効果が得られず開発中止となった。この報告よりわれわれはTNP-351の癌に対するin vivoの効果が,抗血管新生作用によるものではないかと考え,検討を行った。その結果,TNP-351は,in vitroで血管新生因子bFGFによるウシ副腎由来毛細血管内皮細胞(BCEC)の増殖を抑制し,その抑制効果は用量依存性で,100nMの低濃度で有意な抑制効果が得られた。さらにTNP-351は,bFGF刺激によるBCECの遊走及びI型コラーゲンゲルでの管腔形成を抑制した。TNP-351が血管新生抑制作用を持つことが判明した。 また既存の葉酸拮抗剤MTXは現在抗癌剤としてだけでなく、免疫抑制薬として関節リウマチの患者に対しステロイド以上の治療効果が報告されており、臨床においては最も信頼されるリウマチ治療薬として保険適応外であるにも関わらず汎用されて来ており、今回保険適応が新規に認められた。リウマチ関節内のパンヌス増殖においては血管新生が重要であり、血管新生抑制剤はリウマチ治療薬としても期待され、欧米ではサリドマイドがリウマチの適応をめざして血管新生抑制剤として再開発中である。従ってMTXが血管新生抑制作用を併せ持ち、この作用がリウマチに対し有効性を示している可能性が高いと考え,その検討を行った。その結果,in vitroで血管新生因子bFGFによるウシ副腎由来毛細血管内皮細胞(BCEC)の増殖を抑制し,また,bFGF刺激によるBCECの遊走及びI型コラーゲンゲルでの管腔形成を抑制し,TNP-351が血管新生抑制作用を持つことが判明した。
|