研究概要 |
【目的】血管吻合部内膜肥厚モデルを作製し、縫合線周囲の平滑筋増殖におけるETEB2の発現様式を検討した。【方法】150-200gの雄性Wistarラットを対象とした。腹部大動脈を切開し、9-0ナイロンで連続縫合閉鎖した後1,2,4,8週目に犠牲死させた。対照として無処置のラットを用いた。評価項目として、1)摘出した腹部大動脈をHEで染色し、内膜肥厚度(新生内膜/中膜比)を求めた(各週群n=15)。2)抗-BTEB2、cyclin dependent kinase4(cdk4)およびsp1抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。また、新生内膜におけるBTEB2 index(BTEB2陽性細胞/全細胞)を計測した(各週群n=15)。3)摘出した腹部大動脈よりRNAを抽出し、RT-PCR法でBTEB2のmRNAの発現を確認した(各週群n=3、1および2週のみ)。BTEB2のmRNAはGAPDHのmRNAとの比で定量化した。【結果】1)内膜肥厚度は、対照群に比し各週群で有意(p<0.05)に高率(0.5±0.3%vs9.8±6.5%、14.5±11.8%、8.4±5.3%、9.2±7.4%)であった。2)cdk4は新生内膜に特異的に発現した。sp1は全経過を通じ内膜肥厚と無関係に発現した。BTEB2 indexは、1,2,4週目に比し8週目で有意(p<0.05)に低下した(31.7±13.2%、34.6±5.0%、32.9±6.4%、20.0±5.0%)。3)BTEB2のmRNAは、対照群に比し術後1、2週目で有意(p<0.05)に発現が増加した(21.5±5.0%vs61.9±23.8%、63.9±23.3%)。【結語】BTEB2は血管吻合部狭窄の進行を正に調節することが予想され、吻合部狭窄の予防にBTEB2のantisense治療が有用である可能性がある。
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