脳動脈瘤に対する血管内手術として、プラチナ製コイルを使用した動脈瘤内塞栓術が盛んに行われてきているが、塞栓術後の血管のリモデリングに関しては今までほとんど解明されていなかった。 我々は、親血管からの動脈瘤入口部での、コイル塞栓術後の血管内皮の再生・新生についての研究を続けている。 我々の今までの基礎研究で、犬の頚動脈内皮では、プラチナコイルをコラーゲンにてコーティングすることによって、コイル上に内皮細胞が再生してくることが解明されていたが、今年度の研究にて以下のことが明らかになった。 1.砂ネズミの脳の微小血管から採取した血管内皮をプラチナコイル表面で培養すると、犬の頚動脈と同様に、コイル表面をコラーゲンでコーティングした場合のみに、コイル上での内皮増殖が認められた。 2.経時的な観察によると、この内皮増殖によるコイル表面の完全被覆は2週間で認められた。よって、我々の今までの研究結果は、頚部血管(頭蓋外)血管だけでなく、脳内血管でも同様な結果が得られることが実証されたことになる。 3.血管新生を誘導するサイトカイン、および血管内皮の増殖因子を作用させた場合の、コイル表面での血管内皮増殖能の変化についてのin-vitro実験を行っている。サイトカインとしてIL-8とTNF-α、および増殖因子としてVEGFを用い、培養内皮に作用させたときの内皮細胞の増殖能の変化の基礎的データを現在収集中であり、今のところ増殖能亢進の最適条件は定まっていないのが現状である。
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