研究概要 |
我々はT細胞活性化をブロックし急性拒絶反応を抑制するとされる可溶性融合蛋白CTLA4Ig遺伝子をAdenovirus vectorに組み込んだAdCTLA4Igを用い、同種神経移植において移植神経へのAdCTLA4Ig局所的投与によるCTLA4Ig遺伝子導入が可能か、またAdCTLA4Ig全身投与または局所投与により移植神経の急性拒絶反応が抑制可能かについて研究した。 まずAdCTLA4Igを、293細胞を用いて増殖させ、分離・精製した。 次に主要組織適合抗原(RT1)亜領域の全て異なるラット同種神経移植モデル(ACI-Lewis)を作成した。これをsyngeneic graft(Lewis-Lewis)群、非治療群、AdCTLA4Ig全身投与群、AdCTLA4Ig局所投与群の4群に分けた。全身投与群ではAdCTLA4Ig全身投与後のCTLA4Ig血中濃度を測定し、単回投与でも長期間高い血中濃度が維持されることが確認できた。また局所投与群では神経移植直後AdCTLA4Igを3×10^8pfu/ml移植神経内に局所注射しCTLA4Igの発現をみるため免疫染色をおこなった。局所投与後1週では移植神経内のCTLA4Ig発現が確認され、神経へのAdCTLA4Ig局所投与によるCTLA4Ig遺伝子導入が可能であることが証明された。 拒絶の評価は,各群の移植神経を術後2,4,8週で採取し組織学的評価を行った。結果は、移植後2週では、全身投与群、局所投与群共に拒絶反応は非投与群に対して優位に抑制されていた。移植後4週、8週では局所投与群は非投与群と有意差はなく拒絶の進行がみられたが、全身投与群では非投与群に対して拒絶反応は優位に抑制されており、同種神経移植におけるAdCTLA4Ig局所投与と全身投与の有効性に違いがあることがわかった。
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