研究概要 |
ジアシルグリセロール(DG)は生体内の細胞において、様々な脂質代謝の中間体としてのみならず、細胞内二次メッセンジャーとしても重要な役割を果たす。種々の蛋白質をリン酸化するプロテインキナーゼC(PKC)はこのDGにより活性調節を受けることから、DGキナーゼ(DGK)はこのDGの代謝を介してPKC活性をコントロールする役割を果たす。我々はこれまでラット脳より5つのDGKアイソザイム(DGKalpha, -beta, -gamma, -zeta, -iota)のクローニングを行い、脳内遺伝子発現を報告してきた。本研究では、ラット脊髄・後根神経節におけるこれらDGKアイソザイムの機能的役割を追求する目的で、これまで得られた遺伝子発現局在の解析に加え、抗体の作製による蛋白局在の検討を行った。 抗体の作成に関しては、各々のDGKアイソザイムに特異的な領域を選択しグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として大腸菌にて大量培養発現を行った。グルタチオンカラムによる精製後、家兎に免疫を行い、現在血清からの抗体精製を行っている。 抗体作成の成功したDGKzetaに関して、後根神経節を中心に細胞内局在を精査したところ、個々の神経節細胞ごとに局在が異なることを見い出した。とりわけ比較的小型の細胞においては、核と細胞質における分布に大きなばらつきが認められ、刺激に応答した細胞内局在の変化の可能性を示唆するものであった。サブスタンスPやCGRPなどの神経ペプチドホルモンの免疫組織化学像との比較を行ったところ、DGKzetaの細胞内局在様式との有意な相関は認められなかった。現在さらに、座骨神経の切断実験および末梢へのエタノール注入による刺激実験による局在の変化を検討中である。
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