研究概要 |
母体に合併症のない症例より分娩時に両親の書類上の同意を得た後、臍帯血、胎盤血をヘパリン加採血した。検体は採取後24時間以内に処理を行った。前年度同様にPercoll(1.080g/ml)を用いた比重遠心法で単核球を分離した。分離した単核球をtype I collagen coatedプラスティックディッシュに播種(1×10^6cells/cm^2)し20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いて培養を行った。また、採取し分離した単核球の一部に対してフローサイトメトリーを用い表面抗原の発現を調べた。検索した表面抗原はCD14,29,34,44,68,105である。培養により接着性細胞の存在と、コロニーの形成が観察された。接着性の細胞が出現した時点でbFGF(5ng/ml)を添加し細胞の増殖を促進した。線維芽細胞様の細胞が十分増殖した培養皿に対してdexamethasone,beta-glycerol phosphate,ascorbic acidを含む骨芽細胞分化誘導培地を加えて培養を継続した。分化誘導培地を加えることにより細胞形態は線維芽細胞様の形態から立方状の形態へと変化し、Von Kossa染色により細胞周囲のカルシウムの沈着を認めた。また同時に、多核巨細胞の存在も示された。フローサイトメトリーによる表面抗原の検索では、CD29,44,105の発現を高率に認めた。血球系幹細胞のマーカーであるCD34の発現も認められた。以上から臍帯血、及び胎盤血中には比重遠心法により分離されるプラスティック接着性の細胞が存在し、骨芽細胞分化誘導培地により骨芽細胞へと分化誘導可能な細胞が存在することが示された。表面抗原においても従来の報告による血球系細胞のマーカーだけではなく間葉系細胞のマーカーも高率に発現していた。 以上を確認してから、ヌード・ラットの皮下に移植しin vivoでの骨組織の誘導を試みた。しかし、明らかな骨・軟骨組織は観察できなかった。そのため、フローサイトメトリーを用いたより詳細な表面抗原の調査と、より選択的な間葉系幹細胞の分離や培養条件の検索を行って、より分化能が高い細胞群の準備方法を続けて検討している。
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