ヒト胎児組織(骨)を用いてヒト前立腺癌骨転移モデルの作成を試みた。 使用した前立腺癌細胞株:LNCaP、PC-3、TSU-P1 動物:4-6週齢の雄性SCIDマウス ヒト胎児組織:十分なインフォームトコンセントの後に得られた16〜20週の男性胎児の臓器(骨)。 胎児骨を雄性SCIDマウス背部皮下に移植後以下の実験を行った。1)Circulating cell colonization assay:移植4週後ヒト前立腺癌細胞(1x10^6)をマウス尾静脈から注入。注入6週後、マウスの臓器および移植したヒト胎児骨における腫瘍コロニーの有無、数、容積、組織像を観察した。2)End organ growth assay:移植4週後ヒト前立腺癌細胞(1x10^4)を直接胎児骨に注入。注入6週後、移植した臓器およびマウスの臓器における腫瘍コロニーの有無、数、容積、組織像を観察した。 [結果]リンパ節および腹膜転移巣由来の細胞株(LNCap、TSU-P1)ではいずれのassayにおいてもマウス脊椎骨、ヒト胎児骨ともに転移巣を認めなかった。一方、骨転移巣由来の細胞株(PC3)ではcirculating cell colonization assayでは、マウス脊椎骨に転移巣を認めなかった(0/15)が移植したヒト胎児骨に転移巣を認めた(4/15)。また、End organ growth assayでは、移植骨への腫瘍生着は極めて良好であった(19/19)。胎児骨の転移巣は組織学的には著明な骨破壊、骨溶解像を伴う所見が得られた。これらの結果から、骨転移巣由来の前立腺癌細胞株とヒト骨とは親和性が強いことが示唆され、ヒト胎児骨を用いたヒト前立腺癌骨転移モデルの可能性が示唆された。
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