家族性前立腺癌の発症に対する重金属解毒系酵素をコードする遺伝子のメチル化の果たす役割を検索した。本研究では、グルタチオン-S-トランスフェラーゼP1(GSTP1)のプロモーターのメチル化に焦点をあてた。GSTP1は前立腺癌組織においてメチル化により発現がdown-regulationされている遺伝子であるが、遺伝子多型が報告されている。Wild-typeのIle/Ileタイプに比べ、変異型のValタイプが前立腺癌発症リスクを高める報告がなされているため、今回は、Ile/Ileタイプの症例およびコントロールを対象にプロモーターのメチル化を検討した。末梢血白血球からゲノムDNAを抽出し、Ile/IleタイプのゲノタイプをPCR-restriction fragment length polymorphism法により検討した。制限酵素Alw261によりIle/Ileゲノタイプの症例を選んだ。癌症例5例、正常コントロール5例のDNA 1μgをBisulfiteにより処理し、メチル化されていないシトシンをチミンに変換させた。このmodified DNAを鋳型DNAにしてmethylation specific PCRによりメチル化の状態を検索した。末梢血白血球ではメチル化および非メチル化共に生じていることが判明した。GSTP1は前立腺癌発症に極めて重要な影響をもつ酵素であるが、その遺伝子多型とメチル化を代表としたエピジェネティクの因子の相互作用が関与していると思われた。
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