研究概要 |
小児習慣性扁桃炎患者における化膿性レンサ球菌に対する免疫応答能を探るために,178例の血清および67例の咽頭洗浄液における抗リポタイコ酸(LTA)抗体価を酵素免疫定量法(ELISA法)を用いて測定した.その結果,2-5歳の習慣性扁桃炎患児では同年齢の健康児に比較して血清抗LTA-IgG抗体価および咽頭洗浄液中の抗LTA-分泌型IgA抗体価がいずれも有意に低下していた.一方,化膿性レンサ球菌凍結乾燥抗原やASOに対する抗体価は両者に差を認めなかった.これらの成績から低年齢の小児における扁桃炎の反復感染の原因としてリポタイコ酸に対する免疫応答の脆弱性が関与している可能性が示唆された. BALB/cマウスに対しLTAとともにコレラトキシンBサブユニット(CT)投与(LTA+CT群),LTAのみ投与(LTA群)および対照群の3群に分け経鼻感作を行った.最終免疫1週間後の血清および鼻咽頭洗浄液中の抗LTA特異的抗体価をELISAにて測定し,咽頭洗浄液処理を行った細菌の咽頭細胞への付着を測定した.LTA鼻腔感作マウスにおける血清LTA特異的IgG抗体量は対照群より有意に高値で,鼻咽頭洗浄液中のLTA特異的IgA抗体量はLTA+CT群では他の2群より有意に高値であった.また,咽頭細胞への付着細菌数は,LTA+CT群の咽頭洗浄液にて細菌処理すると他の2群の洗浄液処理時より有意に抑制された.LTAとコレラトキシンBサブユニットの経鼻感作は化膿性レンサ球菌性扁桃炎に対するワクチンとして有効である化膿性が示唆された.
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