脂溶性低分子量化合物であるベタメサゾンを強膜内へ一定速度で徐放した場合、標的組織である硝子体や網脈絡膜への薬物送達が可能であるかを検討するとともに、経強膜的薬物送達後の網脈絡膜中における薬物濃度分布を明らかにするため、以下の検討を実施した。 ベタメサゾンを含有する溶出膜制御型ディスク状インプラントを生体非分解性高分子である酢酸ビニルを用いて調製した。なお、本高分子は既に硝子体内インプラントとして製品化されているVitrasert【○!R】に使用されている高い生体適合性を有する基剤である。これを白色家兎を強膜内に移植し溶出試験、眼内薬物動態および安全性評価として電気生理学的評価と組織学的評価を実施した。ベタメサゾンはin vitroおよびin vivoにおいて4週間0時溶出を示した。in vitroとin vivo間でその溶出挙動には良好な相関関係が認められた。硝子体および網脈絡膜中には4週間の評価期間を通してベタメサゾンが検出され、網脈絡膜中では炎症抑制を目的とする薬物有効濃度を4週間にわたり維持することが可能であった。また、網脈絡膜中の薬物濃度分布を測定するため本検討では、移植部位周辺、その対側および後極部周辺の3箇所において濃度測定を実施した。その結果、評価を実施した4週間にわたって濃度勾配が認められ、その濃度は移植部位からの距離に比例して低下した。インプラントの安全性評価として実施した電気生理学的および移植部位直下の網脈絡膜の組織学的評価においては顕著な毒性は認められなかった。本システムを用いることにより経強膜的に薬物を眼内へ送達することが可能であった。また、本システムを用いて薬物を徐放した場合、標的組織のひとつである網脈絡膜中には顕著な濃度勾配が存在することから、移植部位はこれらのことを考慮して選択する必要があることが示唆された。
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