研究課題/領域番号 |
13877303
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
朔 敬 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40145264)
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研究分担者 |
大城 和文 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (50332648)
依田 浩子(米持) 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (60293213)
程 くん 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (40207460)
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キーワード | アジア民族 / 口腔粘膜癌 / 表在型扁平上皮癌 / 前癌病変 / 病理疫学 / 歯科補綴物 / 噛みたばこ / がん遺伝子 |
研究概要 |
(1)正常口腔粘膜ならびに口腔粘膜異型上皮・扁平上皮癌病変における細胞外基質発現:病理組織学的に上皮の形態を正常、過形成上皮、異型上皮、口腔粘膜癌に区分し、ついで、免疫組織化学とハイブリッド組織化学によって基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカンを中心に、テネイシン、ファイブロネクチン等の細胞外基質およびヘパラン硫酸鎖の局在と遺伝子発現を検討したところ、各分子が上皮層内に発現していることを確認した。正常では、傍基底細胞層を中心に限局していたのが、異型上皮では基底細胞から棘細胞上層まで発現が広がった。しかし、浸潤性癌胞巣内には発現が減弱して間質優位に発現の場が変換したので、浸潤性を獲得しない段階では間質の誘導が不可能なため腫瘍実質細胞自身が間質としての細胞外基質分子を産生沈着し、物質輸送の担体として供している可能性が示唆された。ヘパラン硫酸鎖は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンのパールカンコア蛋白質とは異なり、異型上皮から浸潤癌ではその局在が消失したので、両者が同様な代謝経過をとらないことが判明した。 (2)口腔粘膜病変におけるヘパラナーゼの発現:上記(1)項でヘパラン硫酸鎖とヘパラン硫酸プロテオグリカンのパールカンコア蛋白質とは異なる代謝経過をとることが判明したので、その機序をさぐるために、ヘパラナーゼの発現を検討したところ、ヘパラナーゼは異型上皮の程度が上昇するのと同期してその発現が亢進したので、上皮細胞自身がヘパラン硫酸プロテオグリカンのヘパラン硫酸鎖を消化してコア蛋白質のみを細胞間に沈着している可能性が明らかとなった。 (3)リンパ球による細胞外基質発現:ヒト末梢血リンパ球をパーコール法によって分離し、PHA刺激により幼若化させたのちに、PCR法、蛍光抗体法、免役沈降法により、パールカンをはじめとする細胞外基質の発現について各分子の発現を確認しえた。したがって、リンパ球は細胞一般の遊走機構と同様にこれらの細胞外基質をみずから産生してそれを遊走のよりどころとしている可能性がしめされた。昨年までに明らかになった上皮層内の浸潤リンパ球の細胞外基質発現現象を合わせ考察すると、非異型上皮性病変では、上皮内を遊走するリンパ球は基質をみずから産生しながら移動を可能としていることが示唆された。
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