研究概要 |
今年度はinsulin-like growth factor-I(IGF-I)の影響について検討した。 先に我々が考案したin vivoと同様の立体構築を維持可能な無血清盟官培養系を用いて、生後5日齢のマウス下顎第一臼歯においてIGF-Iの影響を調べた。培養開始前に、あらかじめIGF-I receptorがヘルトビッヒ上皮鞘(HERS)に存在するかどうかを免疫組織化学的に確認した。臼歯歯胚は培養4日目で対照群に較べIGF-I添加群で歯根成長を促進していた。次にIGF-Iと共に中和抗体を添加して6日間培養を行った。実験は対照(A)群、IGF-I添加(B)群、中和抗体添加(C)群、中和抗体添加群で2日間培養後IGF-I添加群で4日間培養したIGF-Iリカバリー(D)群の4群とした。すべての群で4日間の培養に比較し歯根が伸長していた。形態観察に加え、形態計測をして比較した結果、B群はA群に較べ2倍近いHERS成長の促進が見られ、C群はA群とほぼ同様の成長に留まった。D群は培養途中で中和抗体を除くことにより、残り4日間の培養でかなりHERS成長が回復した。このことからIGF-Iが歯根,の成長、特にHERSの伸長に促進的に働くことが明らかとなった。さらに、培養1日目にBrdUを取り込ませ、HERSの細胞増殖について調べた。陽性細胞は歯髄、歯根膜、歯槽骨とHERSに見られた。HERSの陽性細胞数をカウントしてみた結果、外エナメル上皮においてA、C群とB群の間に有意の差が見られ、IGF-IがHERSの外エナメル上皮の細胞増殖に影響を及ぼしている事が示された。これらの実験からIGF-IはHERSの増殖を調節する因子として重要な役割を持っていることが判明した。
|