研究概要 |
p27タンパクの発現低下が口腔扁平上皮癌(OSCC)において高頻度に認められ,また悪性度と正の相関関係があることから,p27ならびにその関連因子をターゲットとした遺伝子治療の可能性に関する基礎的研究として,本研究では,OSCCにおけるp27分解に関与するSKP2の発現およびp27発現低下との関連ならびにSKP2のp27タンパク分解への関与について検討することとした.本年度はOSCCにおけるSKP2の発現およびp27の発現低下との相関,OSCC組織におけるp27分解活性とSKP2発現の相関ならびにOSCC培養細胞株におけるSKP2の発現とp27発現低下の関係について検討し,以下の結果を得た. 1.軽度から中等度上皮異形成症では1例(9%)のみにSkp2の高い発現がみられたのに対し,高度上皮異形成症では半数に発現の増強が認められた.p27の発現低下はいずれにもみられなかった. 2.OSCCでは18例(49%)にSkp2の高発現があり転移を伴う症例でより高い発現を示した. 3.p27の発現を欠く症例のうち58%がSkp2の高発現を示し,Skp2とp27の発現状況には負の相関関係がうかがわれた. 4.Skp2高発現症例は低発現例に較べて有意に低い生存率を示し,さらに,Skp2を高発現しp27の発現が低下している症例はより低い生存率を示した. 5.OSCC組織ならびに細胞株ともに,Skp2を高発現するものでp27の分解能が高かった. 以上の結果からSkp2がOS CCの予後判定因子として有用であるとともに,癌治療の新しい標的となることが示された.
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