研究概要 |
象牙質には,外向象牙細菅内容液の流れがあるので,象牙質表面に貼付した薬剤は歯髄に到達することを抑制される.加圧やイオン導入は外向きの流れに抗して薬剤を送達することを促進するかもしれない.イオン導入法が抗炎症薬や抗生物質を歯髄に送達するのを助ける可能性を検索する目的で研究は行われた.情報を提示された患者から得た歯より髄角直上の象牙質ディスク(0. 7mmの厚み)を採取し,表面を酸エッチングした.0. 05Mのmetronidazole, sodium salicylate, naproxen sodiumをスブリットチェンバーの一方に入れ,他方には生理食塩水を入れた.Hydraulic conductanceを計算し,基準値とした.イオン導入(0. 05mAの定電流)の有無でサンプルを採取した後,spectophotometerで濃度を計測した.表面性状は走査式電子顕微鏡を用いて観察した.その結果,う蝕象牙質直下の浸透性は健全象牙質に比較してhydraulic conductanceが有意に小さかった.電子顕微鏡像では健全歯では象牙細菅は空いたままだったが,う蝕下の象牙質では結晶で詰まっていたり,象牙質で修復されたりしていた.こうした形態学的観察結果からの予想とは異なり,陰通電のイオン導入を行うことで健全・う蝕象牙質とも薬剤透過性は増加した.これらのことから,イオン導入法は3種の薬剤の拡散を増強することが判明した.
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