研究概要 |
亜鉛欠乏に起因した味覚異常では,37kDaの亜鉛結合タンパク質(Gustin)濃度が低下しており,このタンパク質は炭酸脱水酵素VI型(CAVI)と相同性があることが確認されている。そこで、そのタンパク質量を定量し、亜鉛欠乏による味覚障害診断の一助とすることを目的としている。方法としてまず初めに既知のヒト炭酸脱水酵素VI型アミノ酸配列から選択したアミノ酸配列により合成ペプチド抗原を作成し、ウサギ2羽に免疫して抗血清を得た。精製を行った後、スタンダードとして用いた。つまりヒト炭酸脱水酵素VI型アミノ酸の合成ペプチドに対するポリクローナル抗体を作成し,ELISA法を用いて唾液中の亜鉛結合タンパク質の検出を試みた。 被験者(味覚正常者および障害者)から、安静時に全唾液および耳下腺唾液を採取し、各々の被験者の味覚閾値の背景を検討するために、四基本味(シュークロース、硫酸キニーネ、酒石酸、塩化ナトリウム)に対する調査も行った。またELISA法では、96穴のELISA用マルチプレートにCoating Bufferにて希釈した合成ペプチドおよび各種唾液をコーティングした。続いて、作成したポリクローナル抗体を一抗体(2500倍希釈)として加え、二次抗体にはヤギ抗ウサギIgG(500倍希釈)を用いた。さらに、アビジン・ビオチン法にて反応させ、発色させた。 その結果、スタンダードカーブは12.5-400ng/mlの範囲でほぼ直線性が得られた。CAVIの濃度は、味覚正常者、障害者ともに全唾液に比較して耳下腺唾液はおよそ4倍であった。また、味覚正常者と比較して味覚異常者はおよそ6倍であった。よって、味覚障害者では正常者と比較して唾液中亜鉛結合タンパク質濃度が薄い傾向が確認され、耳下腺に存在していることが示唆された。 次年度はデータをより詳細にまとめ、構築する予定である。
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