研究概要 |
目的:臼歯喪失期間の違いが,学習・記憶の中枢と言われる海馬に及ぼす影響を明らかするために,老化促進モデルマウスP8//Ymi(以下SAMP8と略す)を用いて,海馬の形態学的検討を行った。 方法:実験動物として2ヶ月齢のSAMP8,30匹を使用した。処置動物は,2ヶ月齢で上顎両側全臼歯を抜歯し,3ヶ月齢(若齢期),5ヶ月齢(中年期),8ヶ月齢(老齢期)まで飼育した3群とした。これに対し,無処置動物として2ヶ月齢で抜歯を行わず,3,5,8ヶ月齢まで飼育した3群を設定した。 SAMP8が観察月齢に達したところで,脳組織切片を作製し,通法に従いNiss1染色を行い,海馬CA3領域の錐体細胞の形態学的観察を行った。 結果:臼歯喪失を伴う処置動物と臼歯喪失を伴わない無処置動物を比較すると,中年期において海馬CA3領域の錐体細胞数ならびに細胞面積の減少が認められたが,若齢期,老齢期において差は認められなかった。また加齢によって処置動物,無処置動物ともに,海馬CA3領域の単位面積当たりの錐体細胞数ならびに細胞面積の減少が認められたが,処置動物では中年期に,無処置動物では老齢期に減少した。 結論:臼歯喪失を伴うSAMP8は,臼歯喪失を伴わないものと比較して,早期に海馬CA3領域の錐体細胞数ならびに細胞面積の減少が認められたことから,臼歯喪失は加齢に伴う海馬の形態学的変化を促進させる可能性が示唆された。
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