対象:健康成人ボランティア(年齢26-30歳)15名を対象に下記の研究を行った。 方法:被検者に咬合を5mm挙上した咬合床を装着し、バリケード単独ならびにバリケード混和コンビーフの試験食品を咀嚼あり、咀嚼なしの条件で嚥下させ、嚥下造影検査により嚥下動態を評価した。 結果:咬合床装着下では、1)咀嚼なしの条件ではバリケード単独ならびにバリケード混和コンビーフのいずれにおいても、口腔通過時間の著明な延長を認めた。ただし、咽頭通過時間には大きな差はみられなかった。また、喉頭蓋谷や梨状陥凹に試験食品の残留が認められた。2)咀嚼ありの条件では、上記の結果に加えて、健康成人が咀嚼嚥下時に通常みられるstage II transportの出現率は低下していた。また、咬合を挙上した状態では、とくに舌運動に著明な変化、いわゆるwondering tongueとも云えるような状態が出現した。 現時点での考察と次年度の展望:以上のことは末梢における咀嚼システムの異常が中枢における嚥下システムに何らかの影響を及ぼしている可能性があることを示唆している。ただし、咬合の挙上により、嚥下運動時の舌と口蓋との恒常的な接触状態が妨げられたため、このような状態が出現した可能性も否定できないため、次年度は咬合を挙上した状態における嚥下圧の測定を中心に行う予定である。また、咀嚼嚥下と非咀嚼嚥下での中枢における活動の違いを明らかにするため、fMRIを用いた評価も予定している。
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