我々はヒアルロン酸CMC膜などの生体材料を用いて、頭頸部領域における組織隔離法の有用性を検討するため、今年度以下の検索を行った。 1.実験モデルの確立 実験には7週齢のウィスター系ラット(雄)を用い、以下の群に分けた。 第1群.大腿部皮膚に切開を入れ、筋膜上で剥離翻転し、弁を形成した。弁直下の筋を筋膜とともにたて約15mmよこ約20mm深さ約1mmの大きさで切除し、閉創した。 第2群.第1群と同様に筋を切除するが、剥離した弁側の筋膜も可及的に剥離し閉創した。 第3群.弁を形成した後、弁直下の筋を筋膜とともにたて約25mmよこ約30mm深さ約1mmの大きさで切除し、剥離した弁側の筋膜も可及的に剥離し閉創した。 各群ともそれぞれ処置後2週目から8週目まで2週ごとに安楽死させ、大腿部皮膚および筋組織を試料として摘出した。摘出した試料は通法に従って病理組織学的検索を行い、癒着形成の経時的変化を観察した。 この結果、第1群では6週目で癒着の形成が認められるものの、個体間でややばらつきがあった。第2群では2週目には皮膚と筋組織との間に肉芽組織を認め、6週目には両者が緊密な線維性組織で連続しているものが多くみられた。第3群では与えた創傷の面積が大きすぎたためか、観察期間中、創部に血性の滲出液の貯留を認めるものが多く、癒着形成はほとんど認められなかった。以上より3群中で第2群が最も癒着形成のモデルに適していると思われ、これを対照群とした。 2.ヒアルロン酸CMC膜による癒着防止効果の検索 実験群として、対照群と同様の方法で処置を行い、閉創前にヒアルロン酸CMC膜を欠損部に貼付し皮膚と筋組織とを物理的に遮断した。対照群と同様に試料を摘出し、病理組織学的に検索した。 実験群では8週までの観察期間中、対照群と比較して、癒着の形成率が低い傾向が認められた。 今後さらに免疫組織学的検索、組織計量学的検索を行い、詳細な比較検討を行う予定である。
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